10年付き合ったら友達
「10年付き合ったら友達。」
院長先生が古くからお世話になってきた、今はなき中村部屋の中村親方のお言葉です。
関脇 富士櫻として現役時代を闘われてきた中村親方は、例え相撲取りとして地位が上がらなくても、10年共に頑張った弟子は引退しても友達、とおっしゃっていたそうです。

わごいち通院歴10年
実はわごいちの通院歴が10年を超える人がずいぶん沢山いらっしゃるのです。私が弟子に入るずっと前からわごいちを知っている人たちがいっぱい。
本当なら大常連さんで威張って通える人達なのですが、だけどみなさん、施術のたびに怒られてます(笑)
だけど毎月、必ずわごいちの日。もう生活の一部にしてくださってるんですね。
今日はそうした人たちのお一人の、「10年って伊達じゃない」と強く思うエピソードがあったのでご紹介したいと思います。
自分のことなのに思い出せない
Fさんは体調を一度崩したのをきっかけに、今は山水コースで月に2回通われてます。
前回の施術の時、あまりおなかの調子が良くなく、院長先生が何があったか尋ねても、歯切れの悪い返事しか返ってこなかったのだとか。珍しくなんだかイライラした様子だったそうです。バトンタッチした私が施術に入ったとき、目から涙が静かに流れていました。
「悲しい涙ですか、それとも悔しい涙ですか。」
「分からない、何も話したくない。」
そんな拒絶の姿勢は今までで初めてで、それ以上聞かず、ただ胸が締まっていくのをやわらげるためハート呼吸をしてその日を終えたのです。
心残りがありながら次回を待ちました。

「すみません」と胸の内
その2週間後の施術の後、院長先生から聞いたお話です。
「『前回の時はすみませんでした。』から始まってね、それはもうあっぱれというくらいの謝り方でね。おなかが張ってたから『何食べた?』僕に聞かれたときに、どんな風に過ごしてたか思い出せない自分がいてショックやったらしい。めちゃめちゃ忙しい日々の中で、自分が追い詰められてるってことさえが分かってなかったらしいわ。」
「そんなことがあったんですか。」
「うん、聞かれて話そうとして自分のことが思い出せない状態に呆然となったんやな。でその後、イライラして僕に反発してしまって。何やってるんだろう私・・って、気持ちの整理がつかなかっただって。」
「そうですか。」
「紙鳶にも謝っておいてほしいと言ってはったよ。いやほんまにあっぱれや、潔い謝り方やった。この2週間で立て直して、よう胸の内を話してくれはったわ。こっちもちゃんと向き合おうと思うな、やっぱりな。」
おなかの調子も良かったそうです。ホッとしたのと何とも言えぬ胸の熱さと。

10年って伊達じゃない
「やっぱり10年超の付き合いって伊達やないな。」
本当に10年って伊達じゃない。
この女性とはもう15年。毎月通い続けられての今。
話すだけじゃない、聞くだけじゃない。認め合って受け入れて、「ごめんなさい、ありがとう」を届けることができるって、そんな相手、そんな場所、なかなかないんじゃないかなと思います。
ただただ月日が流れるだけじゃないんですね。存在が自分の一部って、すごいことだと思うけれど自然なことだとも思います。
「10年付き合ったら友達」とは、なんと核を突いた言葉でしょうか。だけど今回のFさんのことが無かったら、実感できなかったなとも思います。積み重ねていけるのは本当に幸せなことですね。

井上紙鳶
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