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黒糖の話「バラン家さん訪問記」

黒糖の魅力

スーパーで売っている一般的な黒糖
スーパーで売っている一般的な黒糖

よくスーパーで見かける黒糖。石ころのようにごつごつした形状と山の土のようなこげ茶色。沖縄土産などでもらってどう食べたらいいかわからず、冷蔵庫で眠ったままという人も多いのではないでしょうか。

 

今回はそんなまだまだ馴染みの薄い黒糖について、ちょっと掘り下げて書いてみます。

 

砂糖の種類、いくつ知っていますか?

出典:独立行政法人畜産産業振興機構(https://www.alic.go.jp/)
出典:独立行政法人畜産産業振興機構(https://www.alic.go.jp/)

 

黒糖と言えば砂糖の一種。実は私たちが買うことができる砂糖にも色々な種類があります。例えばこのようなものたちです。

 

上白糖、グラニュー糖、白ざら糖、三温糖、中ざら糖、角砂糖、氷砂糖、液糖、和三盆、黒糖・黒砂糖・・・

 

お菓子作りをしている人などは詳しいかもしれませんね。

 

ところで私たちわごいちでよく訊かれるのが「先生、砂糖はどれが一番健康に良いですか?」というものです。

 

今回は、そのような健康にも少し触れながら書いてみたいと思います。

 

砂糖の原料~北のテンサイと南のサトウキビ~

砂糖の原材料になるビートの一品種、甜菜(てんさい)
砂糖の原材料になるビートの一品種、甜菜(てんさい)

 

まずは砂糖の原料です。

 

多くの場合(人工甘味料を除いて)、砂糖の原料はサトウキビかテンサイです。テンサイはカブラに似た野菜で、主に北海道で作られています。サトウキビは主に沖縄ですから、日本の北と南の両端で砂糖が作られているということになります。

 

もちろん輸入品も多く、国産比率は30~40%ほどだそうです。

 

 

ではテンサイやサトウキビからどのように砂糖が作られているのか、見ていきましょう。まずは黒糖のつくり方です。

 

黒糖の作り方

[引用]沖縄黒砂糖協同組合、沖縄黒砂糖工業会(https://www.okinawa-kurozatou.or.jp/story/p2)
[引用]沖縄黒砂糖協同組合、沖縄黒砂糖工業会(https://www.okinawa-kurozatou.or.jp/story/p2)

 

図では沢山の工程があるように見えますが、単純にサトウキビを絞り、しぼり汁を煮詰めて固めると黒糖になります。意外にシンプルですね。

 

ここで気になるのは白砂糖と黒糖のちがい。何が違うのか。

 

実は白砂糖とはこの黒糖の中から純粋な糖(ショ糖)だけを抽出したものです。ピュアな砂糖と言えます。一方の黒糖はショ糖+それ以外の成分「モラセス」の混合物です。このモラセスこそが白砂糖と黒糖の違いといえます。

 

黒糖と白糖の違い「モラセス」とは何か?

砂糖はサトウキビやテンサイを絞った煮汁から作ると説明しました。これらには砂糖成分(ショ糖)以外にも当然さまざまな成分が含まれています。それらを総称してモラセスといいます。

 

モラセスの別名は糖蜜、廃糖蜜とも言われます。主にミネラルなどの成分を多く含み、甘みは砂糖より少ないものです。

 

 

上記はあくまでも目安の数値ですが、近年ミネラル不足が問題とされる私たちの食生活において、モラセスつまり黒糖の持つ栄養価は無視できないものがあります。

 

逆に言うと、これらモラセスを完全に取り除いた白砂糖やグラニュー糖など白い砂糖にはこれらのミネラルが含まれていないという事になります。(白砂糖に添加物で着色した砂糖もありますから、その辺は注意が必要です)

 

黒糖が健康にいいと言われる理由の一つはここにあります。また白砂糖と比べて消化吸収スピードがゆっくりなので血糖値が上がりにくく、特に糖尿病などで悩む人には白砂糖より黒糖が進められています。

 

このように健康面からみると、白砂糖よりも黒砂糖の方がメリットが大きいと言えます。

 

わごいちに合った糖蜜(モラセス)。EM菌の培養に使っています
わごいちに合った糖蜜(モラセス)。EM菌の培養に使っています

ばらん家さんの黒糖づくり現場レポ

このように栄養面から見た黒糖の魅力はとても大きいものですが、ひとくちに「黒糖」と言っても、その品質を見ていくと商品によって差があります。

 

ここからは私が「食の学校」の産地研修で訪問した<ばらん家>さんの黒糖づくりに基づいて、本物の黒糖の魅力に迫ってみたいと思います。

 

キーワードは、農薬、肥料、添加物、そして自然愛です。

 

 

訪問した<NPO法人 ばらん家>さんは、熊本県の葦北というところにあります。

 

田園地帯の突き当りをいくと、山際にサトウキビ農園と黒糖製造工場(小さな作業場)がありました。

 

食の学校の訪問に合わせて、煮詰め工程をスケジュールくださり、じっくりとその過程を見ることができました。

 

サトウキビのしぼり汁を煮詰めているところ
サトウキビのしぼり汁を煮詰めているところ

 

サトウキビの汁を煮詰めるステンレスの釜。

 

写真上の緑色の液体が、絞ったままのサトウキビ汁です。絞った汁をその日のうちに煮詰めるのだそうです。

 

写真下の美味しそうな飴色の液体は、そのひとつ前の工程の煮汁。随分煮詰まってこの色になります。もう少し煮詰めると完成ですね。

 

 

煮詰めるために、釜の下(床下)でごうごうと火を焚いています。燃料は山から切り出してきた薪。原材料はすべて現地調達ですね。

 

大釜は二つあり、右の釜である程度に詰めた後、左の釜に移してさらに煮詰めます。

 

その後もう一つの小さな釜に移して最終的な煮詰めを行い、型に流して冷やして固まるのを待ちます。

 

つまり温度を変えながら3回煮詰めていくのですね。その辺のタイミングや塩梅にノウハウがあるようです。

 

では動画で見てみましょう。

 

一つ目の釜と二つ目の釜で、それぞれ煮詰めています。焦げ付かないように常に攪拌させなくてはなりません。

 

一つ目の釜の汁を二つ目に移し、また新しいしぼり汁を二つ目の釜にホースで注入しています。

 

最終煮詰め工程の3つ目の釜。しっかりに詰まったら下の枠に流し込み冷却しながら整形していきます。

 

ばらん家さんのここがすごい!

熱心に話を聴きメモを取る食の学校の会員さんたち
熱心に話を聴きメモを取る食の学校の会員さんたち

 

今回は緑色のしぼり汁を煮詰めて固めて黒糖にするところまでみせてもらったのですが、その他にも原材料のサトウキビをかじらせてもらったり、生のしぼり汁を飲ませてもらったり、冷まして完成した黒糖をかじらせてもらったりと、黒糖づくりの全体像を体感させてもらいました。

 

またばらん家さんの黒糖が一般的なものとどう違うのかというお話も聞きました。私が理解した違いは以下のようなものです。

 

①すべて自家製

サトウキビの栽培から黒糖の製造まで一貫生産。その場で栽培し、その場でしぼり、その場で煮詰めて固める。美味しいお蕎麦は「打ちたて・挽たて・湯がきたて」と言いますが、こちらの黒糖はいわば「収穫したて・しぼりたて・煮詰めたて」の3たてなのです。

 

②無添加

ほとんどの黒糖は製造途中に消石灰や水酸化カルシウムが添加されています(原材料に表示義務がないので書いていない製造元がほとんどです)

これらはこんにゃくを固めるときにもつかいますので危険性はないとされますが、やはり風味が変わるようです。また入れれば入れるほど硬くなりくちどけにくくなります。

 

③無農薬・無化学肥料

原材料がサトウキビ100%ですからサトウキビそのものの味が大事です。ばらん家さんでは無農薬(自家製の竹酢液やトウガラシで虫よけ)、肥料は絞ったサトウキビのカスや発酵堆肥などの有機肥料で育てているとのこと。

 

ここまでこだわっている黒糖はなかなか他にないようです。

 

想いがあってこその食

サトウキビ畑(ばらん家さんではありません)
サトウキビ畑(ばらん家さんではありません)

私がばらん家さんのお話を聴いていて特に心に残ったのは、「さとうきびを全部絞りきらないで畑に帰す」ということでした。

 

おそらく味や品質的にえぐみが出たりするのではと思いましたが、人間はどうしても欲張りなので「少しでも沢山作って売ろう」と思いがちです。

 

実際に清涼飲料水などによく使われるぶどう糖果糖液糖などは、サトウキビをぎりぎりまで絞ったカスに薬剤をかけてさらに糖分を絞り出していると聞きます。そこまでして搾り取る甘みと、ほどよいところまで絞ってあとは畑に帰し、それがまた次の世代の栄養となる循環の甘みと、その違いは大きいと思います。

 

聞けばばらん家さんは、精神的な障がいを抱えた人の働く場でもあるとか。作物も人間も命として自然の中で働くことの大事さを追求する家がばらん家で、黒糖はその一手段なのかもしれません。

 

そんなことを思う、大阪に帰ってからあとからあとから色々と思い出し考えさせられる<ばらん家>さんでした。

 


わごいちは整体院ですが、食のプロたちの集まり「食の学校」に参加し、日本各地の本物の食を勉強させていただいています。食にご関心ある方は、この本をお買い求めください。

 

『塩川恭子と食の学校』(サンスマイル)