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わごいちの作り方㉑「ハート呼吸法」という発明

 私の著書でもメディア取材でも必ずと言っていいほど登場する「ハート呼吸法」は、わごいちのかけがえのないノウハウです。また私が整体を習った櫻井寛先生の数々の教えの中で、唯一その原形をとどめているのもこの「ハート呼吸法」です。わごいち24年の歴史の洗礼を浴び続けながらもその有効性が揺らぐことはありませんでした。

 

 ハート呼吸法は、櫻井先生が開発されました。先生は大阪上本町のシャロン健康センターという整体院で長年お勤めになり、そこで整体法とカイロプラクティックを習得されたと聞いています。

 

 このシャロン健康センター、今はもうありませんが、当時は知る人ぞ知る人気の整体院だったようです。アメリカから来た当時最新のカイロプラクティックに、内臓を中心とした整体法の組み合わせに多くの人が通っていました。櫻井先生はそこで副院長を勤められておられました。

 

 そんな櫻井先生がだんだんと疑問に思っていたこと。それは施術で内臓を上げてもまた元通りになる、ということです。シャロンの院長先生は「カイロプラクティックで頭蓋骨調整をすれば戻らない」という意見だったそうですが、実際には胃も腸も落ちてくる。それをどうにかしないと、と思案を尽くして考案したのが「ハート呼吸法」でした。

 

 「口から息を吸う時に肋骨を広げ、その広がった肋骨に向かっておなかから息を吐いていくと一緒に内臓が上がる」という合理的なメカニズムでした。櫻井先生は少し変わった人ですが、このハート呼吸法は先生の天才性が表れているように思います。

 

 その後、櫻井先生は独立開業され、私はそこに4か月通いつめ、丹力の技術やノウハウを学ばせてもらうのですが、ハート呼吸法は本当によくできているなと、今でも出会えたことに感謝している次第です。

 

 ところで今でこそ下火になった感はありますが、日本の健康呼吸法と言えば「腹式呼吸法」です。とはいえ色々な解釈ややり方があってややこしいのですが、いわゆる「おなかに吸っておなかから吐く」「下腹がボコッと膨らむように吸う」というやり方は健康面ではマイナスです。おなかを揉んでいるとよく分かりますが、おなかに息を吸うと内臓が下がるからです。でもおなかを揉まないとそれが分からないようです。

 

 おなかに手を当てていると、内臓がいかに呼吸の影響を受けているかが良く分かります。吸う量と吐く量、どこに吸うかどこへ吐くか、どんなリズムで吸って吐くか、それらが内臓に刻々と影響を与えています。つまり呼吸の使い方がおなかの状態をある程度決めるのですね。

 

 ハート呼吸法は櫻井先生による世紀の発見であると思います。さらにわごいちで生れた肋骨矯正が加わり、大きな変化、効果を生み出しています。整体界を見渡して櫻井先生のような人種は稀有だと思います。もちろん私も珍種でしょう。その二人がこの本町で出会った。なんとも楽しい運命のいたずらではないでしょうか。そんな変わったところに出会い通う皆さんもまたきっと変わり者なのかもしれませんね。真理は常識の外にあると信じ共に歩んでいきましょう。(つづく)

 

 

 

三宅弘晃