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わごいちの作り方⑰第1次経営危機・・夜の施術をやめる

 「次の予約どうしようかな。夜は先生疲れているから、次回は朝にお願いします」と言われてドキッとしたこと、今でもよく覚えています。やっぱりばれてるんや・・・と。

 

 開業してからのメディア取材ラッシュのお陰で予約が取れない整体院となり、定休日なし、朝9時から夜11時までぶっ通しで働く日々が数年たった頃です。身体も脳も心も全てが悲鳴を上げていました。整体するか寝るかで終わる1日。身に余る人気のために命をすり減らす感じがしていました。そんな時に冒頭の一言を言われたのです。

 

 実際にその通りでした。朝はまだ元気、午後に段々消耗していって、夜には乾いたぞうきんを絞るように仕事をするような状態。申し訳ないなと思いながら、びっしりの予約待ちリストに追われていたのです。よくよく悩んで、夜は閉めることにしました。

 

 困ったのはお客さん方でした。ビジネス街本町にあるわごいちの主要お客さん層は会社員の皆さんでした。仕事上がり、もしくは週末に来たいという人が圧倒的に多かったのです。そのような人たちに「すいません。このような事情で、昼間か週末にお願いします」と謝りながら協力を求めました。半休をとったり週末に通うようにしてくださった方も沢山いらしたけれど、そうなれば今度は週末が過剰に込み合い予約が取れない、そんな事態にもなりどうしようもなくなりました。

 

 実はその時にかなりの人たちがわごいちを離れたのです。でも本当にどうしようもなくて、整体院経営の難しさを痛感しました。結果的に開業して初めての経営危機にもなりました。

 

 こんな風に書くと、「元々人気の夜は仕事して、昼間の時間を減らしたら良かったのでは?」「全部の夜をやめるんじゃなくて、2日に1日は夜もするとかできるのでは?」と頭のいい方は思われたんじゃないかと思います。たしかにそうです。それも考えました。でもそうできない理由があったのです。

 

 曲りなりにも数年間整体をしてきて感じていたこと、それはお花が夜になると花びらを閉じるように、人の身体も夜は閉じる感じがあるな、ということです。直感的、感覚的にそう思っていました。だから夜に整体をするときはいつも、まず花びらを開いて、そのなかに手を突っ込んだような施術になり、施術の反応が鈍い。ですからやめるならば夜だと、経営も大事だけれど実(効果)を取るべきだと思ったのです。

 

 今となってはその理由もはっきり分かります。昼間の交感神経優位の時は、わごいちのような治療系整体に向いているのです。逆に夜の副交感神経優位の時は、癒し系リラクゼーションが向いています。身体のバイオリズムに合わせるならば、整体は活動期の昼間が良いのです。

 

 そんなことがあり、多くの人にご迷惑をかけながら夜の施術をやめました。お陰様で体調はかなり復活しましたが、その代償に赤字経営が数年続きました。それはそれできつかったです

 

三宅弘晃