わごいちでは徒弟制を採用しています。つまり院長を師匠とし、施術スタッフは弟子として共に働きながら、技術の伝承を行っています。
内容は現代では珍しいほど古式な徒弟制です。その一日を簡単ではありますがご紹介しましょう。
弟子の一日は始業前の朝の準備から始まります。毎日の日課としては
・掃除
・洗濯物の取り込み
・施術着のアイロンがけ
・植木のみずやり花の手入れ
・施術室のしつらえ
・お茶の用意
・カルテの準備
などを1時間半程度かけて毎日行います。
おなかを鍛え身体を整える「わごいち四股踏み」、その後で水シャワーを浴びて身体を調えます。
朝の準備の最後に音読を行います。
音読とは、院長三宅作の詩集『おなかの詩』を声を揃えて読むことです。約10分間の音読を通して集中力を高め、心を整え、場の空気を引き締めていきます。
「朝のホウレンソウ」とも呼んでいますが、互いに共有しておくべきこと、その日に来られるお客さんに対する施術内容の確認、その他事前に相談しておくことなどを確認する時間です。
窓の左から差し込む朝日を感じながら朝の施術を行います。
施術場は師弟が互いの施術をみれるように見通しを良くしています。(お客さん同士のお顔が見えないよう衝立などで配慮しています)
時々に弟子は師匠の技をみて学び、師匠は弟子の成長を確かめ、指導に反映させていきます。
時間が合えば一緒に、合わなければ個々に昼食をとります。
わごいちの昼食はまかないご飯です。施術に必要なエネルギーと栄養を補いながら、午後の施術を考えて身体が重くならないよう、消化の良い粗食を心がけています。
一日の施術時間の上限は、師匠が2時間まで、弟子は5時間までとしています。これが集中力を最高の状態で維持できる時間なのです。
施術の合間の時間に、書き物をしたり、洗濯をしたり、アイロンをしたり、お問い合わせへの対応をしたり、さまざまな仕事をします。
一日の反省を行います。施術の中で発覚したことなどの共有。弟子から師匠へ思うようにいかなかった施術の報告と相談、師匠から弟子への指導などを行う大事な時間です。
わごいち徒弟では施術で思うようにいかなかったことに関して、「なぜか」「どうすべきだったか」を徹底的に検討します。それが明日への成長になるからです。
大量の洗濯物(作務衣、パジャマ、シーツ、タオルなど)を大型洗濯機2台で洗い、干してから帰ります。またカルテの整理や施術場の片付けなども行います。一日の感謝を込めて最後まできっちりと片付けて退出します。
予定が合えば仕事上がりにお酒をのむことも多いです。なにしろお客さんからの頂き物のお酒や食材がたくさんあります。有り難く料理していただきます。
ご覧いただいたように、わごいちの徒弟制は今の時代には珍しいほど古風なものです。住み込みでないことを除けば、いつの時代?という雰囲気があります。
なぜわごいちでは徒弟制を採用するのか。このように古風で厳格な徒弟制なのか。
それはわごいちの高度技術には繊細な手足の感度と身体感覚が必要だからです。これらは単なる技術練習で身に付くものではなく、生活の中での身体の使い方や五感の鋭さを鍛えていくことが必要なのです。
「起きてから寝るまでの全ての時間が修行」なのです。
アルバイト、パート、請負などさまざまな形で多くのスタッフを採用、教育してきましたが、技術的にわごいちの基準を満足させるまでに至らなかったのです。
その結果を受けて取り組んできたのが今の徒弟制。一時は3人いた弟子も今は井上紙鳶一人となりましたが、ようやくわごいちの技術の真髄に手が届くところまで来ています。それだけわごいちの技術は高度であるということでしょうし、この技術伝承には古風な徒弟制しかない、と確信しています。
ただ、今の時代にこのような働き方は広く理解を得るのは難しいことでしょう。第2、第3の井上紙鳶をどう発掘し、育てていくか、大きな難題だと思っています。しかし同時に、きっとそういう技術こそ学びたい、そういう環境で自分を磨きたい、そんな人材もいるのではないかと、運命に任せようと思っています。
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